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2019年3月

2019年3月29日 (金)

重症成人患者での気管挿管の際のbag-mask換気の意義

Casey JD, Janz DR, Russell DW, Vonderhaar DJ, Joffe AM, Dischert KM, Brown RM, Zouk AN, Gulati S, Heideman BE, Lester MG, Toporek AH, Bentov I, Self WH, Rice TW, Semler MW. Bag-Mask Ventilation during Tracheal Intubation of Critically Ill Adults. The New England journal of medicine 2019;380:811-21.

米国のICU、7施設で行われたRCTで、重症患者に対する気管挿管の際にbag-mask換気を行うかどうかが導入から挿管後2分までの酸素化に及ぼす影響を比較しています。いずれの群でもいわゆる迅速導入が行われており、bag-mask換気群ではPEEP 5~10cmH2O付加が可能なvalveが装着されていると記載されています。非換気群ではSpO2<90%となるまでは換気を行わないprotocolとなっています。401症例をrandomizeして解析した結果、挿管までの時間は換気群で98秒、非換気群で72秒、初回での挿管成功は両群とも80%強であったと記載されています。導入から挿管2分後までのSpO2は換気群で3.9%高いことが示されており、SpO2<90%、80%、70%の頻度も換気群で有意に少ないことが示されています。また誤嚥の頻度も2.5%vs4.0%で有意差が認められませんでした。

 

2019年3月28日 (木)

ARDS初期における自発呼吸の影響

van Haren F, Pham T, Brochard L, Bellani G, Laffey J, Dres M, Fan E, Goligher EC, Heunks L, Lynch J, Wrigge H, McAuley D. Spontaneous Breathing in Early Acute Respiratory Distress Syndrome: Insights From the Large Observational Study to UNderstand the Global Impact of Severe Acute Respiratory FailurE Study. Critical care medicine 2019;47:229-38.

3/25に紹介した論文と同様にLung Safe studyの2次解析で、本研究ではARDS治療開始から2日目までの自発呼吸の有無が予後に及ぼす盈虚を検討しています。解析対象となった約1800症例のうち、58%が自発呼吸を許容するモードでの換気が行われていることが示されています。これらの患者群では調節呼吸モードで管理された患者群と比較して高齢、重症度が高いという点で有意差が認められています。主要評価項目である院内死亡率に関しては有意差が認められていませんが、自発呼吸許容群ではventilator free daysが有意に多く、ICU在室期間が有意に短いことが示されています。結論では自発呼吸を許容する治療戦略を支持する結果となったが、軽症の患者で用いられているというbiasが存在することから解釈には慎重であるべき、と述べられています。

2019年3月26日 (火)

非心臓手術患者における術前炎症反応と周術期心筋傷害の関連

Ackland GL, Abbott TEF, Cain D, Edwards MR, Sultan P, Karmali SN, Fowler AJ, Whittle JR, MacDonald NJ, Reyes A, Paredes LG, Stephens RCM, Del Arroyo AG, Woldman S, Archbold RA, Wragg A, Kam E, Ahmad T, Khan AW, Niebrzegowska E, Pearse RM. Preoperative systemic inflammation and perioperative myocardial injury: prospective observational multicentre cohort study of patients undergoing non-cardiac surgery. British journal of anaesthesia 2019;122:180-7.


英国の2施設で行われたprospective studyで、非心臓手術患者における術前の炎症反応と術後3日目までの心筋傷害の関連を検討しています。術前炎症反応の指標としては血中好中球リンパ球比(NLR)およびリンパ球数低下、単球数増加が用いられており、心筋傷害の指標には高感度troponin T濃度上昇が用いられています。45歳以上の非心臓手術患者約1700症例を対象として検討した結果、対象患者のうち術前NLR>4の症例は約15%、術後心筋傷害を呈した症例は24.5%であることが示されています。NLR高値は術後心筋傷害の独立したリスク因子であり、オッズ比が2.4であることが示されています。同様に術前リンパ球数低下、単球数および好中球数増加も術後心筋傷害のリスク因子であることが明らかになっています。

2019年3月25日 (月)

mild ARDS患者の予後

Outcome of patients presenting mild acute respiratory distress syndrome. Anesthesiology 2019;130:263.
2016年にJAMAに掲載されたlung Safe studyの2次解析で入院時にmild ARDSと診断された症例の予後を解析したretrospective studyです。Lung Safe studyでARDSと診断された約2400症例のうち、mild ARDSに該当した症例は714例であり、このうち580症例を対象として解析が行われています。対象患者の入院から1週刊までの経過によりimproving, sustaining, worseningの3群に分けて解析しています。mild ARDS患者全体での院内死亡率は30%であり、worsening群で有意に院内死亡率が高いことが示されています。worseningとなるリスク因子としては外傷、肺炎由来のARDS、肺以外の臓器障害、P/F比低値、最高気道内圧高値が挙げられています。

2019年3月22日 (金)

敗血症性ショック患者に対する蘇生戦略としての末梢循環と乳酸値の比較

Hernandez G, Ospina-Tascon GA, Damiani LP, Estenssoro E, Dubin A, Hurtado J, Friedman G, Castro R, Alegria L, Teboul JL, Cecconi M, Ferri G, Jibaja M, Pairumani R, Fernandez P, Barahona D, Granda-Luna V, Cavalcanti AB, Bakker J. Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial. Jama 2019;321:654-64.

ラテンアメリカ12カ国、28施設で行われたRCTで、敗血症性ショック患者約420症例を対象として初療から8時間までの初期蘇生の指標としての乳酸値とCRT (capillary refill time)を比較した報告です。主要評価項目としては28日死亡率が用いられています。対象患者の約70%がER経由である点、fluid responsivenessの評価に加えてvasopressor test、inodilator testという方法が用いられている点が特徴的です。結果として28日死亡率はCRT参照群の方が低い傾向が認められていますが、p値が0.06で、結論では差が無いと述べられています。また、CRT群では48時間以降の乳酸値の改善、SOFA scoreの改善が有意に良好であり、CRTを指標とすることの意義がありそうな印象です。

2019年3月19日 (火)

冠動脈stent挿入後の患者の非心臓手術における抗血小板療法と出血、ステント血栓の関連

Howell SJ, Hoeks SE, West RM, Wheatcroft SB, Hoeft A. Prospective observational cohort study of the association between antiplatelet therapy, bleeding and thrombosis in patients with coronary stents undergoing noncardiac surgery. British journal of anaesthesia 2019;122:170-9.

2019年3月18日 (月)

麻酔科医の専門性と帝王切開における全身麻酔の関連

Cobb BT, Lane-Fall MB, Month RC, Onuoha OC, Srinivas SK, Neuman MD. Anesthesiologist Specialization and Use of General Anesthesia for Cesarean Delivery. Anesthesiology 2019;130:237-46.

米国の1施設のdataを用いて行われたretrospective studyで、麻酔指導医が産科麻酔の専門医であることと帝王切開の麻酔方法として神経幹麻酔が選択されることの関連を調査しています。該当施設ではweekdayの7:00amから17:30pmまでは産科麻酔専門医が指導に当たり、これ以外の時間帯では一般麻酔科医が指導に当たっていると記載されています。2013年から2017年までに帝王切開を受けた約4000症例を対象として解析した結果、産科麻酔専門医が指導し多少例は65%とされています。全身麻酔は9%の症例で行われており、産科麻酔専門医が担当した場合、全身麻酔が選択されるオッズ比は0.71であることが示されています。全身麻酔が選択される因子としてはアフリカ系、複数回妊娠、緊急帝王切開などが抽出されています。

2019年3月15日 (金)

心不全を合併した非心臓手術患者における左室駆出率および症状と術後死亡の関連

Lerman BJ, Popat RA, Assimes TL, Heidenreich PA, Wren SM. Association of Left Ventricular Ejection Fraction and Symptoms With Mortality After Elective Noncardiac Surgery Among Patients With Heart Failure. Jama 2019;321:572-9.

米国の在郷軍人会病院のdataを用いたretrospective studyで、非心臓手術患者における心不全と術後90日死亡率の関連を検討しています。心不全患者を入院歴、2回以上の外来通院歴の有無および心エコーによる左室駆出率で分けて解析しています。約61万症例のうち、心不全に該当した症例7.9%、4万8千症例が対象となっており、このうち60%でEF>60%であったことが示されています。非心不全患者における90日死亡率が1.2%であったのに対して、心不全患者では5.5%であり、心不全が90日死亡の有意なリスク因子であることが示されています。

2019年3月14日 (木)

重症患者における末梢循環と予後の予測因子としてのreninの意義

Gleeson PJ, Crippa IA, Mongkolpun W, Cavicchi FZ, Van Meerhaeghe T, Brimioulle S, Taccone FS, Vincent JL, Creteur J. Renin as a Marker of Tissue-Perfusion and Prognosis in Critically Ill Patients. Critical care medicine 2019;47:152-8.

ベルギーで行われたprospective, observational studyで、重症患者における循環指標としてのreninの意義を検討しています。ショック患者13症例をふくむ20症例から得られた110検体を用いて解析しています。reninの問題点とされていた日内変動、beta遮断薬、ARB、カテコラミン、血液浄化法等との相互作用は統計学的に有意ではありませんでした。臨床的にはMAP、尿量とrenin濃度の間には負の相関関係があり、予後に関してもreninが経時的に増加している症例では予後が不良で、reninによる死亡の予測はAUROCが0.8と高値であることが示されています。

2019年3月12日 (火)

脊髄くも膜下ブロックによる帝王切開時の膠質液preloadの有無による相違

Tawfik MM, Tarbay AI, Elaidy AM, Awad KA, Ezz HM, Tolba MA. Combined Colloid Preload and Crystalloid Coload Versus Crystalloid Coload During Spinal Anesthesia for Cesarean Delivery: A Randomized Controlled Trial. Anesthesia and analgesia 2019;128:304-12.

エジプトの研究者がまとめたRCTで、脊髄くも膜下ブロックで帝王切開を受ける患者を対象として500mlのHES preload+500mlのcrystalloid coloadと1000ml crystalloid coloadでspinal施行から臍帯結紮までの間のephedrine投与量を比較しています。本研究の特徴はspinal施行前後でIVC径の呼吸性変動を観察している点です。200症例を対象として比較した結果、輸液戦略によるephedrine投与量の差は認められませんでした。spinal施行後のIVC呼吸性変動についてはHES coload群で有意に低下していますが、臨床的意義は少ないと考察されています。

2019年3月11日 (月)

晶質液と膠質液が腹部手術後の腎機能とdisability free survivalに及ぼす影響の比較

Joosten A, Delaporte A, Mortier J, Ickx B, Van Obbergh L, Vincent JL, Cannesson M, Rinehart J, Van der Linden P. Long-term Impact of Crystalloid versus Colloid Solutions on Renal Function and Disability-free Survival after Major Abdominal Surgery. Anesthesiology 2019;130:227-36.

2018年にAnesthesiologyに掲載されたcolloidとcrystalloidを比較したRCTの2次解析で1年後の腎機能とdisability free survivalを比較しています。拡大手術患者80症例を対象としてclosed loopを用いた目標指向型輸液管理が用いられており、original studyでは30日後の腎機能に有意差がないことが示されています。1年後も腎機能には差が無く、colloid群、crystalloid群 におけるdisability free survivalは79%と60%であり、colloid群で有意に良好であることが示されています。

2019年3月 8日 (金)

拡大手術患者における脳波モニタをガイドとした麻酔薬投与が術後せん妄に及ぼす影響

Wildes TS, Mickle AM, Ben Abdallah A, et al. Effect of Electroencephalography-Guided Anesthetic Administration on Postoperative Delirium Among Older Adults Undergoing Major Surgery: The ENGAGES Randomized Clinical Trial. Jama 2019;321:473-83.

米国で行われたRCTで、60歳以上の拡大手術を受ける患者を対象としてBISモニタによる揮発性麻酔薬濃度調整が術後5日目までのせん妄の発生頻度に及ぼす影響を検討しています。BISモニタ群での目標はburst supressionの回避とBIS 40以下の回避が用いられています。約1200症例を対象として解析した結果、BIS群、対照群でのせん妄発生率はそれぞれ26%、23%で有意差は認められませんでした。主要評価項目では差がありませんでしたが副次評価項目である30日死亡率は有意にBIS群で低い結果となっています。また両群とも術中phenylephrineの総投与量がほぼ2mgと報告されています。

2019年3月 7日 (木)

ARDS患者におけるventilatory ratioの生理学的および臨床的意義

Sinha P, Calfee CS, Beitler JR, Soni N, Ho K, Matthay MA, Kallet RH. Physiologic Analysis and Clinical Performance of the Ventilatory Ratio in Acute Respiratory Distress Syndrome. American journal of respiratory and critical care medicine 2019;199:333-41.

Ventilatory ratio(VR)とは分時換気量およびPaCO2から算出する指標であり、死腔率の代用となりうると考えられています。本研究は過去のARDS networkのtrialのデータを用いてARDS患者におけるVRと死腔率の関連、VRと予後の関連を検討しています。520症例のデータを解析した結果、VRと死腔率には有意な相関関係が認められています。またARDSの生存群におけるVRは1.75であるのに対して死亡例では2.0と有意に高値であり、VRはARDS患者における死亡の独立したリスク因子であることが示されています。

2019年3月 5日 (火)

大腿骨骨折手術患者における術前心エコー検査の有用性

Yonekura H, Ide K, Onishi Y, Nahara I, Takeda C, Kawakami K. Preoperative Echocardiography for Patients With Hip Fractures Undergoing Surgery: A Retrospective Cohort Study Using a Nationwide Database. Anesthesia and analgesia 2019;128:213-20.

日本のDPCデータを用いたretrospective studyで、2008年から2016年までに大腿骨頸部骨折で手術を受けた60歳以上の患者で術前心エコー検査の施行と30日死亡率の関連を検討しています。対象患者約6万6千症例のうち、52%で術前心エコー検査が施行されています。対象症例の30日死亡率1.8%で既報と同程度でした。傾向スコアマッチングで背景を調整した結果、術前心エコー施行は30日死亡率と有意な関連がないことが示されています。

2019年3月 4日 (月)

PONVに対するrescueとしてのamisulprideの有用性

Habib AS, Kranke P, Bergese SD, Chung F, Ayad S, Siddiqui N, Motsch J, Leiman DG, Melson TI, Diemunsch P, Fox GM, Candiotti KA. Amisulpride for the Rescue Treatment of Postoperative Nausea or Vomiting in Patients Failing Prophylaxis: A Randomized, Placebo-controlled Phase III Trial. Anesthesiology 2019;130:203-12.

米国など23施設で行われた多施設RCTで、吸入麻酔による全身麻酔症例のうち、標準的なPONV予防策にもかかわらずPONVが発生した症例に対するrescueとしてのamisulprideの効果を検討しています。今回使用されたamisulprideはdopamine D2/D3受容体に対する拮抗薬で、本来は抗精神病薬ですが、PONVの治療薬としての有用性はすでに示されています。約2300症例のうち、700症例がrescueを必要とし、placebo、amisulpride 5mg、10mgの投与を受けています。結果としてplaceboの有効性が28%、amisulpride 10mgの有効性が42%であり、10mg投与が有意にPONVのrescueとして有用であることが示されています。

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近況報告

  • 臨床麻酔学会シンポジウム
    11/8(金)午後に筋弛緩に関するシンポジウムが予定されています。多数のご参加をお待ちしております。
  • 第66回日本麻酔科学会
    初日の午後のシンポジウムおよび最終日のリフレッシャーコースで発表させていただきます。2日目の学術委員会企画でも座長を仰せつかっております。多数のご参加をお待ちしております。
  • 集中治療医学会@京都
    第20会場でのICUモニタリングup-to-dateというシンポジウムに多数ご参加いただきありがとうございました。
  • J Intensive Care
    本年もreviewer of the yearに選んでいただきました。
  • 麻酔科研修ノート第3版
    稲田先生、上村先生、土田先生、村川先生編集による第3版が刊行されました。管理人も3項目執筆いたしました。
  • 2019年
    12年目になりました。ひきつづきよろしくお願いいたします。
  • Web seminar
    9/25夕方、大塚製薬工場さん主催のweb seminarで「生理学でひもとく最近の周術期循環管理」という内容で発表させていただきました。再放送も予定されているとのことですので、ご興味のある方は大塚製薬工場の担当者にご相談ください。
  • 病院移転
    6/16に行われた管理人の施設の移転が地上波で放送されることになりました(7/27夜NHK)。
  • 病院移転
    管理人の勤務先の新病院への移転が6/16に行われ、無事終了いたしました。
  • 集中治療医学会@幕張
    2/22(木)の午後のCTG委員会企画のシンポジウムに多数ご参加頂きありがとうございます。
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