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2019年5月

2019年5月28日 (火)

高齢手術患者の術後せん妄を減少させるための鎮静度に関する研究

Sieber F, Neufeld KJ, Gottschalk A, et al. Depth of sedation as an interventional target to reduce postoperative delirium: mortality and functional outcomes of the Strategy to Reduce the Incidence of Postoperative Delirium in Elderly Patients randomised clinical trial. British journal of anaesthesia 2019;122:480-9.

2018年にJAMA Surgeryに掲載されたSTRIDE trialの2次解析です。STRIDE trialではSABで大腿骨頸部骨折をうけた高齢患者を対象として術中のpropofolによる鎮静度の差が術後せん妄に及ぼす影響を検討していますが、本報告では30日後、12ヶ月後の認知機能、活動度および生命予後のリスク因子を解析しています。1年後の死亡率は14%であり、独立したリスク因子として、Charlson comorbidity index、日常生活index、BMI低値および術後せん妄の程度が抽出され、術中の鎮静度は予後のリスク因子ではないことが示されています。

 

2019年5月27日 (月)

腹部手術後の血圧変動の頻度、程度および検出方法

Turan A, Chang C, Cohen B, et al. Incidence, Severity, and Detection of Blood Pressure Perturbations after Abdominal Surgery: A Prospective Blinded Observational Study. Anesthesiology 2019;130:550-9.

米国の研究者がまとめたretrospective studyで、腹部手術患者約300症例を対象として術後48時間の低血圧および高血圧の頻度を検証した報告です。血圧測定には心電図、pulse oximeterの信号を用いて非観血的血圧を連続的に推定するpulse arrive timeというテクノロジーが用いられており、おそらく日本光電のesCCOと類似した技術が用いられていることと推定します。MAP<70mmHgが30分以上、MAP<65mmHgが15分以上となる事象の発生頻度はそれぞれ24%、18%であり、MAP<65mmHgが15分以上となる事象の47%は看護スタッフによる血圧測定では検出できなかったことが示されています。またMAP>110mmHg、30分以上の高血圧も42%の症例で発生していたと報告されています。

 

2019年5月24日 (金)

急性呼吸不全患者の挿管の際のNPPVとHFNCの比較

Frat JP, Ricard JD, Quenot JP, et al. Non-invasive ventilation versus high-flow nasal cannula oxygen therapy with apnoeic oxygenation for preoxygenation before intubation of patients with acute hypoxaemic respiratory failure: a randomised, multicentre, open-label trial. The Lancet Respiratory medicine 2019;7:303-12.

昨日紹介した論文とほぼ同じclinical questionに対して行われたprospective, randomized trialです。フランスのICU 28施設において呼吸不全に対して気管挿管を行った約320症例をNPPVとHFNCにrandomizeし、挿管操作前後のSpO2を主要評価項目として比較しています。HFNC群では挿管操作中も酸素投与が継続されており、apneic oxygenation効果が期待されるsettingとなっています。結果として両群に有意差は認められ真線でしたが、挿管前の呼吸不全の程度でsubgroup解析を行ったところ、preoxygenation手段と挿管前のPF ratioの間に有意な相互作用が認められ、中程度から重症の低酸素血症を呈する患者ではNPPVの方が有利であることが示唆される結果となっています。

 

2019年5月23日 (木)

ICUでの気管挿管の際の4つのpreoxygenationの方法の有効性の比較

Bailly A, Ricard JD, Le Thuaut A, et al. Compared Efficacy of Four Preoxygenation Methods for Intubation in the ICU: Retrospective Analysis of McGrath Mac Videolaryngoscope Versus Macintosh Laryngoscope (MACMAN) Trial Data. Critical care medicine 2019;47:e340-e8.

2017年JAMAに掲載されたMACMAN trialの2次解析で、重症患者における気管挿管の際の4つのpreoxygenation手段を比較しています。検討した手段はbag-valve mask、non-rebreathing mask、NPPVおよびNHFCで、相関前後の最低SpO2、SpO2<90%および気管挿管に伴う合併症のリスク因子で評価しています。対象患者は319症例で、挿管前のPF ratioは94と記載されています。SpO2<90%の独立したリスク因子としては挿管前のSpO2、preoxygenation手段であり、bag-valve maskを対照とした場合、NPPVは有意にリスクを低下させる一方、NHFCは有意にリスクを増加させることが示されています。

 

2019年5月21日 (火)

全身麻酔は認知機能低下と関連するか?

Strand AK, Nyqvist F, Ekdahl A, Wingren G, Eintrei C. Is there a relationship between anaesthesia and dementia? Acta anaesthesiologica Scandinavica 2019;63:440-7.

スウェーデンの研究者がまとめたretrospective studyで、麻酔暴露と認知機能障害の関連を検討した報告です。類似した報告とは異なる解析方法が用いられており、本報告では、健康保険の10万症例からなるdatabaseを用いてalzheimer disease (AD)など認知機能障害と診断された約430症例と対照症例420症例で過去20年の麻酔暴露の有無を比較しています。

AD群の39%、対照群の22%で麻酔経験があり統計学的に有意差が認められています。麻酔方法として局所麻酔、揮発性麻酔薬による全身麻酔(GA gas)、揮発性麻酔薬以外での全身麻酔(GA no gas)で比較したところ、揮発性麻酔薬による全身麻酔がADの有意なリスク因子であることが示されています。考察ではpropofolに神経保護作用がある可能性、重症例で局所麻酔が選択された可能性および麻酔ではなく手術侵襲の影響出会った可能性が挙げられています。

 

2019年5月20日 (月)

全負荷依存性状態の腹部手術患者では舌下微小循環が減少している

Bouattour K, Teboul JL, Varin L, Vicaut E, Duranteau J. Preload Dependence Is Associated with Reduced Sublingual Microcirculation during Major Abdominal Surgery. Anesthesiology 2019;130:541-9.

フランスの研究者が行ったprospective, observational studyで、予定時間90分以上の開腹手術患者でPPVを目標とした輸液負荷が舌の微小循環に及ぼす影響を解析しています。17症例において10分ごとにPPVを含むmacrocirculationと生体顕微鏡による舌の微小循環の定量評価が行われています。PPV>13%をトリガーとした輸液負荷が32回行われており、輸液負荷直前には微小循環が傷害されており、輸液負荷によって回復することが示されています。一方、平均動脈圧には改善が認められませんでした。結語では開腹手術患者における前負荷依存性状態では微小循環が障害されており、輸液負荷によって改善すると述べられています。

 

2019年5月17日 (金)

拡大手術術後のせん妄と長期的な認知機能低下の関連

 Austin CA, O'Gorman T, Stern E, et al. Association Between Postoperative Delirium and Long-term Cognitive Function After Major Nonemergent Surgery. JAMA surgery 2019.

米国の1施設で行われたprospective, observational studyで、1日以上入院を要する待機的手術患者を対象として術後せん妄と長期的な認知機能低下の関連を調査した報告です。術後せん妄の評価は術後1から3日目までのconfusion assessement method、長期的な認知機能の評価は術前と90日後のT-MoCAという指標が用いられています。対象患者は191症例で平均年齢57歳、平均ASA PSは2.7と記載されています。対象患者のうち59例で術後せん妄が発症しており、術前から認知機能低下を認めた症例で術後せん妄のリスクが増加していることが示されています。交絡因子調整後の解析では術後せん妄と手術前後のT-MoCA scoreの変化には有意な関連は認められないようです。一方、術前認知機能が低下している患者群では術後に改善する傾向が認められています。この理由に関してはいくつかの可能性が考察されています。

 

2019年5月16日 (木)

中程度から重傷の頭部外傷患者における持続脳波モニタ

Lee H, Mizrahi MA, Hartings JA, et al. Continuous Electroencephalography After Moderate to Severe Traumatic Brain Injury. Critical care medicine 2019;47:574-82.

米国で行われた重傷頭部外傷患者に対するglutamine酸のアナログに関するRCTの2次解析で、持続脳波モニタリングの所見と予後の関連を検討しています。GCS中央値が7の重傷頭部外傷患者を対象として72時間持続脳波モニタリングが行われた155症例を対象として解析しています。脳波所見としてはbackground activityの異常を3段階、ictal-interictal continuumの異常を4段階で評価しています。結果として49%の症例で重篤な脳波異常を認めましたが、けいれんを生じた症例は4例のみと記載されています。中程度以上の脳波異常の有無で評価した場合、脳波異常と予後には相関が認められませんでしたが、posterior dominant rhythmの消失、N2 sleep transientの消失および優位なbackground delta activityなどの所見を含めることによって予後の予測精度が向上することが示されています。

2019年5月14日 (火)

米国外科学会外科手術リスク算出システムを用いた術前リスク評価

Raymond BL, Wanderer JP, Hawkins AT, et al. Use of the American College of Surgeons National Surgical Quality Improvement Program Surgical Risk Calculator During Preoperative Risk Discussion: The Patient Perspective. Anesthesia and analgesia 2019;128:643-50.

米国のVanderbilt大学で行われたsurveyの結果を解析した報告で、米国外科学会外科手術リスク算出システム(ACS calculator)による客観的リスク評価に関する患者の受け入れを調査しています。術前外来(PEC)受診時に自己評価を行い、その後ACS calculatorによる評価を伝えています。対象患者150症例で平均年齢54歳、ASA PS 3が50%、背部痛に対する脊椎手術の患者が多く、悪性腫瘍手術の患者は22%とされています。結果として、リスクの高い症例ほど自己リスクを過小評価していることが示されています。また、70%の患者がリスクを減少させられるのであればprehabilitationを行うと回答しています。

 

2019年5月13日 (月)

ICD埋め込み患者における電気メス対極板装着位置と電磁妨害

Schulman PM, Treggiari MM, Yanez ND, et al. Electromagnetic Interference with Protocolized Electrosurgery Dispersive Electrode Positioning in Patients with Implantable Cardioverter Defibrillators. Anesthesiology 2019;130:530-40.

米国で行われたobservational studyで、ICD埋め込み患者における対極板装着位置と電磁妨害の関連を検討した報告です。対象患者144症例を臍上部の手術、臍下部の手術、心臓手術に分けて対極板装着部位をprotocol化して検討しており、figureが添付されています。また、頻脈に対する除細動機能はinactivateした上で検討したと記載されています。結果として臍下部の手術では電磁妨害は認められませんでしたが、臍上部の手術では20%の症例で電磁妨害を認め、7%の症例で臨床的に有意な妨害であったと述べられています。心臓手術では背側に対極板を装着して検討していますが、高率に電磁妨害が生じています。

2019年5月10日 (金)

開腹肝切除術における硬膜外ブロックと持続局所麻酔薬注入の比較

 Bell R, Ward D, Jeffery J, et al. A Randomized Controlled Trial Comparing Epidural Analgesia Versus Continuous Local Anesthetic Infiltration Via Abdominal Wound Catheter in Open Liver Resection. Annals of surgery 2019;269:413-9.

4月は適当な論文が少ないため3月号掲載の論文を紹介します。英国で行われたRCTで、開腹肝切除術(OLR)患者に対する術後鎮痛手段として硬膜外ブロック(EP)と創部局所麻酔薬注入(abdominal wound catheter, AWC)とiv-PCAの組み合わせを比較しています。両群とも5日間局所麻酔薬投与が行われています。主要評価項目は入院期間で、術後pain score、輸液量、合併症発生率なども検討対象となっています。83症例を対象として検討した結果、入院期間、合併症発生率等には差がなく、EP群で輸液量、血管作動薬投与期間が長く、AWC群で2日目までのpain scoreが高値であることが示されています。EP群で20%のfailureが発生したのに対してAWC群でのfailureは7%であったと述べられています。考察では本研究施行後、該当施設でのOLR症例ではAWCによる疼痛管理に変更したと述べられています。

 

2019年5月 9日 (木)

敗血症性ショック患者における血小板減少症の意義

Menard CE, Kumar A, Houston DS, et al. Evolution and Impact of Thrombocytopenia in Septic Shock: A Retrospective Cohort Study. Critical care medicine 2019;47:558-65.

カナダの研究者がまとめたretrospective studyで、2施設における敗血症性ショック患者の血小板減少症の意義を解析した報告です。血小板減少症の定義としては10万/mm3が用いられています。対象患者980症例のうち、血小板減少に該当した症例が45%で、大多数の症例でICU入室2日目から低下が始まっています。血小板減少は死亡リスクおよびICU在室日数延長の有意なリスク因子であることが示されています。一方、病態の改善とともに血小板数が回復する傾向が認められており、血管作動薬離脱から2日目に回復する症例が多いことが示されています。

 

2019年5月 7日 (火)

第2世代DESによるPCI施行患者における手術時の心臓リスク

Cardiac Risk of Noncardiac Surgery After Percutaneous Coronary Intervention With Second-Generation Drug-Eluting Stents. Anesth Analg. 2019 Apr;128(4):621-628.

2019年5月 2日 (木)

重症患者における腹腔内圧上昇の頻度、リスク因子および予後

Reintam Blaser A, Regli A, De Keulenaer B, et al. Incidence, Risk Factors, and Outcomes of Intra-Abdominal Hypertension in Critically Ill Patients-A Prospective Multicenter Study (IROI Study). Crit Care Med 2019; 47: 535-542.

オーストラリアの研究者がまとめた多施設観察研究で、ICU患者における腹腔内圧上昇(IAH)および腹部コンパートメント症候群(ACS)の頻度、リスク因子、予後を解析した報告です。15施設、約490症例を対象として、IAP>12mmHgを基準として解析した結果、ICU入室期間中に49%の症例でIAHが発症、ACSの頻度は3.9%であり、多くが開腹による減圧術を受けていることが示されています。ICU入室から2週間までのIAH発生が28日および90日死亡の独立したリスク因子であり、BMI、APACHE II score、腹部膨満、蠕動音の欠如、PEEP>7cmH2OがIAH発症のリスク因子であることが示されています。

 

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近況報告

  • 臨床麻酔学会シンポジウム
    11/8(金)午後に筋弛緩に関するシンポジウムが予定されています。多数のご参加をお待ちしております。
  • 第66回日本麻酔科学会
    初日の午後のシンポジウムおよび最終日のリフレッシャーコースで発表させていただきます。2日目の学術委員会企画でも座長を仰せつかっております。多数のご参加をお待ちしております。
  • 集中治療医学会@京都
    第20会場でのICUモニタリングup-to-dateというシンポジウムに多数ご参加いただきありがとうございました。
  • J Intensive Care
    本年もreviewer of the yearに選んでいただきました。
  • 麻酔科研修ノート第3版
    稲田先生、上村先生、土田先生、村川先生編集による第3版が刊行されました。管理人も3項目執筆いたしました。
  • 2019年
    12年目になりました。ひきつづきよろしくお願いいたします。
  • Web seminar
    9/25夕方、大塚製薬工場さん主催のweb seminarで「生理学でひもとく最近の周術期循環管理」という内容で発表させていただきました。再放送も予定されているとのことですので、ご興味のある方は大塚製薬工場の担当者にご相談ください。
  • 病院移転
    6/16に行われた管理人の施設の移転が地上波で放送されることになりました(7/27夜NHK)。
  • 病院移転
    管理人の勤務先の新病院への移転が6/16に行われ、無事終了いたしました。
  • 集中治療医学会@幕張
    2/22(木)の午後のCTG委員会企画のシンポジウムに多数ご参加頂きありがとうございます。
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