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2019年6月

2019年6月28日 (金)

ARDS患者における早期神経筋遮断の効果

 Moss M, Huang DT, Brower RG, et al. Early Neuromuscular Blockade in the Acute Respiratory Distress Syndrome. The New England journal of medicine 2019;380:1997-2008.

ARDS networkが主体となって行ったRCTで、ARDS患者に対して組み入れから48時間の間の深鎮静+cisatracurium持続投与と神経筋遮断を併用しない浅い鎮静で90日死亡率を比較しています。米国の48施設でPEEP 8cmH2OでPF ratio<150のARDS患者約1000症例を組み入れた時点での中間解析でほとんどの評価項目に有意差が認められず、これ以上の組み入れが中断となっています。ICU aquired weaknessの頻度にも有意差はありませんが、心血管系合併症は深鎮静+cisatracurium持続投与群で有意に増加していることが報告されています。

 

2019年6月27日 (木)

経腸栄養困難な重症患者に対するulimorelinとmetoclopramideの比較

 Heyland DK, van Zanten ARH, Grau-Carmona T, et al. A multicenter, randomized, double-blind study of ulimorelin and metoclopramide in the treatment of critically ill patients with enteral feeding intolerance: PROMOTE trial. Intensive care medicine 2019;45:647-56.

重症患者における経腸栄養困難(enteral feed intolerance, EFI)に対するグレリンのanalogであるulimorelinの効果をmetochropramideと比較した報告です。米国、欧州の20箇所で胃内容500ml以上を基準として選択したEFI120症例を対象としてulimorelinあるいはmetochropramideを投与しています。主要評価項目はタンパク質投与量、2次評価項目にはacetoaminophenを用いた胃通過時間、気管内分泌物中のpepsin濃度で評価した誤嚥などが用いられています。結果として両群とも目標タンパク量の約80%投与が可能であり、有効性に関しては有意差が認められませんでした。2次評価項目、副作用の関しても有意差は認められず、ulimorelin、metoclopramideは同程度に有用であったと考察されています。

 

2019年6月25日 (火)

覚醒時の脳波変化パターンとPACUでのせん妄の関連

Hesse S, Kreuzer M, Hight D, et al. Association of electroencephalogram trajectories during emergence from anaesthesia with delirium in the postanaesthesia care unit: an early sign of postoperative complications. British journal of anaesthesia 2019;122:622-34.

術中の脳波所見とPACUでのせん妄の関連を検討したprospective, observational studyで、特に覚醒時にspindle dominant patternが認められるかどうかに注目して解析が行われています。米国およびニュージーランドの4施設、約650症例を対象として行われたstudyで、BISまたはSedlineモニタから脳波の原波形を抽出して解析しています。PACUでのせん妄の発生率は20%で、手術時間、脊椎手術、麻酔維持期のburst supressionおよび覚醒期にspindle dominant patternが認められないことが有意なリスク因子であることが示されています。

 

2019年6月24日 (月)

冠動脈疾患を有する非心臓手術患者における術中低血圧と心血管系イベントの関連

 Roshanov PS, Sheth T, Duceppe E, et al. Relationship between Perioperative Hypotension and Perioperative Cardiovascular Events in Patients with Coronary Artery Disease Undergoing Major Noncardiac Surgery. Anesthesiology 2019;130:756-66.

2015年にBMJに掲載されたCoronary CTA Vision studyの2次解析で、冠動脈狭窄の有無が周術期低血圧と術後心イベントの関連を就職するかどうかを検討しています。術前冠動脈CTを施行した冠動脈疾患リスクを有する非心臓手術患者約950症例を対象として解析しています。対象症例の91%で何らかの冠動脈狭窄が発見され、心イベントは7.7%で発生しています。周術期低血圧は37%の症例で発生し、冠動脈狭窄、周術期低血圧いずれも術後心イベントの独立したリスク因子であることが示されています。両者の関係は相加的であり、考察では冠動脈狭窄がない患者でも低血圧は術後心イベントにリスク因子であることには変わりないと述べられています。

 

2019年6月21日 (金)

敗血症の表現型の新分類の確立、検証および治療への意義

 Seymour CW, Kennedy JN, Wang S, et al. Derivation, Validation, and Potential Treatment Implications of Novel Clinical Phenotypes for Sepsis. Jama 2019.

米国の研究者がまとめたstudyで、受診から6時間までに得られるdataに基づいて敗血症を分類することを目的として行われています。また、過去のRCTのデータにこの分類を適用した場合の死亡率および表現型の分布が異なった場合にRCTの結果が変わるかどうかをsimulationしています。結果として敗血症はalphaからdeltaの4つの表現型に分けられることが示されています。alphaは臓器障害、検査値の異常が少ない群、betaは高齢、合併症が多い群、gammaは発熱等の炎症反応が著明な群、deltaは肝機能障害、乳酸値上昇、低血圧を伴う群とされています。28日死亡率もaphaの2%からdeltaの32%まで有意差が認められています。過去のRCTでbeta、gammaの割合が変化しても結果には大きな差がないのに対して、alphaとdeltaの割合が変化した場合、結論が大きく変わる可能性があることが示されています。

 

2019年6月20日 (木)

肺超音波によるSBTによって生じた肺水腫(WIPO)を検出する方法

 Ferre A, Guillot M, Lichtenstein D, et al. Lung ultrasound allows the diagnosis of weaning-induced pulmonary oedema. Intensive care medicine 2019;45:601-8.

フランスの研究者がまとめたprospective studyで、自発呼吸テスト(SBT)によって肺水腫が生じ(weaning-induced pulmonary oedema、WIPO)、離脱失敗となる事象をSBT中の肺超音波で検出できるかどうかを検討しています。SBT中の肺超音波の評価には前胸部4箇所でのB-lineの本数の合計が用いられています。42症例で62回行われたSBTのうち、33回が失敗に終わり、このうち17回がWIPOに由来する失敗であったと記載されています。これらの失敗群ではB-lineの合計が増加し、6本以上、すなわち1箇所で平均1.5本増加した場合の予測精度は感度、特異度とも88%であることが示されています。なお、考察では血液濃縮によってもWIPOが診断可能であるとする論文が取り上げられています。

 

2019年6月18日 (火)

パルスオキシメーター脈波信号から麻酔導入時の低血圧を検出する方法

Coutrot M, Joachim J, Depret F, Millasseau S, Nougue H, Mateo J, Mebazaa A, Gayat E, Vallee F. Noninvasive continuous detection of arterial hypotension during induction of anaesthesia using a photoplethysmographic signal: proof of concept. British journal of anaesthesia 2019;122:605-12.

フランスの研究者が行ったprospective, observational studyで、パルスオキシメーター脈波信号の変化から血圧の変化を検出する方法の実用性(proof of concept)を検討しています。具体的にはパルスオキシメーター脈波信号の脈動成分(pulsatility index)と全波高に対するdicrotic notchの割合(Dic pleth)に注目しています。脳血管内治療を受ける患者61症例から得られた659データを対象として解析した結果、血圧変化とDic plethの変化は同じ方向、血圧変化とpulsatility indexの変化が逆の方向に推移することが明らかになりました。Dic plethおよびpulsatility indexによる低血圧の予測のAUROCは0.8程度で良好な精度を示していますが、Dic pleth、pulsatility index両者を組み合わせることでさらに精度が向上することが示されています。

 

2019年6月17日 (月)

術中目標指向型輸液管理における晶質液と膠質液が術後合併症に及ぼす影響の比較

 Kabon B, Sessler DI, Kurz A. Effect of Intraoperative Goal-directed Balanced Crystalloid versus Colloid Administration on Major Postoperative Morbidity: A Randomized Trial. Anesthesiology 2019;130:728-44.

米国の2施設とヨーロッパの1施設で行われたRCTで、拡大手術を受ける患者を対象として、30日までの術後合併症発生率に関して乳酸リンゲル液とヒドロキシエチルスターチ液を比較した報告です。約10年間の研究期間に約1100症例を組み入れ、経食道Doppler法を用いた目標指向型輸液管理を施行し、負荷する輸液剤でランダム化しています。結果として30日合併症発生率には有意差はなく、膠質液の優位性は認められませんでした。一方、腎機能に関する悪影響も認められず、考察では敗血症患者と待機手術患者の相違と考察されています。

 

2019年6月14日 (金)

敗血症性凝固異常に対するヒトトロンボモジュリンの効果

Vincent JL, Francois B, Zabolotskikh I, et al. Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy: The SCARLET Randomized Clinical Trial. Jama 2019.

26カ国、159施設で行われたphase 3 trialで、敗血症性凝固異常患者に対するrhsTMの効果をplaceboと比較しています。PT-INR>1.4または血小板15万以下、30%異常の減少を適格とし、rTMを6日間連続投与し、28日死亡率、臓器障害および凝固系parameterの推移を比較しています。約800症例をランダム化し比較した結果、rhsTM投与群で若干死亡率が低下していますが、統計学的有意差は認められず、rTMの有効性は示されませんでした。

 

2019年6月13日 (木)

重症敗血症患者における体温異常が予後に及ぼす影響

Kushimoto S, Abe T, Ogura H, et al. Impact of Body Temperature Abnormalities on the Implementation of Sepsis Bundles and Outcomes in Patients With Severe Sepsis: A Retrospective Sub-Analysis of the Focused Outcome Research on Emergency Care for Acute Respiratory Distress Syndrome, Sepsis and Trauma Study. Critical care medicine 2019;47:691-9.

日本で行われたprospective, observational studyで、敗血症患者における体温異常、特に36°C未満の低体温と予後の関連を検討しています。2016年1月から2017年3月までの59施設、約1100症例を対象とし、36°C未満、36~38°C、38°C以上に分けて検討しています。36°C未満の症例が全体の11%であり、死亡率、ventilator-free days、ICU free daysが36~38°C、38°C以上と比較して有意に不良であることが示されています。また36°C未満の群ではsepsis bundleの適応率も低いことが示されています。


 

2019年6月11日 (火)

待機手術後の急性腎傷害と死亡リスクの関連

Chaudery H, MacDonald N, Ahmad T, et al. Acute Kidney Injury and Risk of Death After Elective Surgery: Prospective Analysis of Data From an International Cohort Study. Anesthesia and analgesia 2019;128:1022-9.

英国の研究者がまとめたprospective, observational studyで、27カ国、約470施設で7日間に行われた手術患者で構成されるISOSというdatabaseを用いて、待機手術患者のAKIが30日死亡率に及ぼす影響を解析した報告です。約3万7千症例を対象に解析した結果、全症例ではAKI発生率2%、30日死亡率0.5%、拡大手術症例に限定するとAKI発生率は4%と報告されています。術後AKIのstageと比例して30日死亡OR画像化することが示されています。また術前eGFRと30日死亡率の関連を解析した結果、eGFRが90ml/min/1.73m2で最も死亡リスクが低く、eGFRの低下すなわちCKDの存在はriskを増加させることが示されています。一方、eGFR高値による死亡リスクの増加は筋肉量の低下が原因と考察されています。

2019年6月 7日 (金)

非心臓手術患者における睡眠時無呼吸症候群と術後心血管系イベントの関連

 Chan MTV, Wang CY, Seet E, et al. Association of Unrecognized Obstructive Sleep Apnea With Postoperative Cardiovascular Events in Patients Undergoing Major Noncardiac Surgery. Jama 2019;321:1788-98.

Hong Kongの研究者が中心となって行った多施設observational studyで、睡眠時無呼吸症候群(OSA)を合併する手術患者における術後心血管系イベントのリスクを検討した報告です。OSAの評価にはrespiratory event index (REI)、oxygen desaturation index (ODI)およびSTOP-Bang screeningを用いて、no OSA、mild OSA、moderate OSA、severe OSAに分類しています。対象患者約1200症例で検討した結果、OSAの頻度はそれぞれ32%, 37%, 19%, 11%であり、severe OSAが術後30日までの心血管系イベントの独立したリスク因子であることが示されています。

 

2019年6月 6日 (木)

肥満患者では敗血症による死亡リスクが減少するか?

 Pepper DJ, Demirkale CY, Sun J, et al. Does Obesity Protect Against Death in Sepsis? A Retrospective Cohort Study of 55,038 Adult Patients. Critical care medicine 2019;47:643-50.

米国の研究者がまとめたretrospective studyで、敗血症による短期的死亡リスクとBMIの関連を検討しています。2009年から2015年の間の米国139施設における敗血症患者約5万5千症例を対象として検討しています。対象症例のうち、underweight、normal weight、overweight、obeseはそれぞれ6%、33%、28%、33%であり、入院期間中の死亡リスクはBMIと逆相関が認められています。Discussionではmalnutritionが死亡リスクと関連する可能性が言及されています。

 

2019年6月 4日 (火)

外科手術患者における硬膜外ブロック使用とせん妄リスク

 Vlisides PE, Thompson A, Kunkler BS, Maybrier HR, Avidan MS, Mashour GA. Perioperative Epidural Use and Risk of Delirium in Surgical Patients: A Secondary Analysis of the PODCAST Trial. Anesthesia and analgesia 2019;128:944-52.

2017年にLancetに掲載されたPODCAST trialの2次解析で、硬膜外ブロック施行が術後せん妄発症に及ぼす影響を検討しています。PODCASTの対象患者のうち硬膜外ブロック施行、非施行の120症例、143症例で術後3日目までのせん妄発生リスクを比較しています。検討期間中のせん妄の有無で検討した場合、硬膜外ブロック施行による統計学的に有意なせん妄減少効果は認められませんでした。一方、時間経過を勘案したlongtitudinal analysisの結果では硬膜外ブロック施行によってせん妄リスクが36%に減少することが示されています。さらに術後pain score、鎮痛薬の使用量も有意な減少を認めています。

 

2019年6月 3日 (月)

乳児患者における経頭蓋超音波による内頚動脈血流呼吸性変動による輸液反応性の評価

Kim EH, Lee JH, Song IK, Kim HS, Jang YE, Kim JT. Respiratory Variation of Internal Carotid Artery Blood Flow Peak Velocity Measured by Transfontanelle Ultrasound to Predict Fluid Responsiveness in Infants: A Prospective Observational Study. Anesthesiology 2019;130:719-27.

韓国の研究者がまとめたprospective studyで、大泉門経由で頭蓋内の内頚動脈血流の呼吸性変動を用いて輸液反応性の評価を行った報告です。

心臓外科手術をうける乳児患者30症例を対象として人工心肺離脱後の輸液反応性の有無をリニアプローブを用いた頭蓋内の内頚動脈血流とTEEを用いた左室流出路血流の呼吸性変動で評価しています。17症例で輸液反応性が認められ、頭蓋内の内頚動脈血流、左室流出路血流いずれの呼吸性変動も比較的正確に輸液反応性の有無を評価できることが明らかになっています。頭蓋内の内頚動脈血流の最適閾値が7.8%と小さい理由として脳血流の自動調節能の影響があると考察されています。



 

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近況報告

  • 臨床麻酔学会シンポジウム
    11/8(金)午後に筋弛緩に関するシンポジウムが予定されています。多数のご参加をお待ちしております。
  • 第66回日本麻酔科学会
    初日の午後のシンポジウムおよび最終日のリフレッシャーコースで発表させていただきます。2日目の学術委員会企画でも座長を仰せつかっております。多数のご参加をお待ちしております。
  • 集中治療医学会@京都
    第20会場でのICUモニタリングup-to-dateというシンポジウムに多数ご参加いただきありがとうございました。
  • J Intensive Care
    本年もreviewer of the yearに選んでいただきました。
  • 麻酔科研修ノート第3版
    稲田先生、上村先生、土田先生、村川先生編集による第3版が刊行されました。管理人も3項目執筆いたしました。
  • 2019年
    12年目になりました。ひきつづきよろしくお願いいたします。
  • Web seminar
    9/25夕方、大塚製薬工場さん主催のweb seminarで「生理学でひもとく最近の周術期循環管理」という内容で発表させていただきました。再放送も予定されているとのことですので、ご興味のある方は大塚製薬工場の担当者にご相談ください。
  • 病院移転
    6/16に行われた管理人の施設の移転が地上波で放送されることになりました(7/27夜NHK)。
  • 病院移転
    管理人の勤務先の新病院への移転が6/16に行われ、無事終了いたしました。
  • 集中治療医学会@幕張
    2/22(木)の午後のCTG委員会企画のシンポジウムに多数ご参加頂きありがとうございます。
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