« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »

2019年7月

2019年7月30日 (火)

腹部手術中の尿量減少の重要性

Myles PS, McIlroy DR, Bellomo R, Wallace S. Importance of intraoperative oliguria during major abdominal surgery: findings of the Restrictive versus Liberal Fluid Therapy in Major Abdominal Surgery trial. British journal of anaesthesia 2019;122:726-33.

2018年にN Engl J Medに掲載されたRELIEF trialの2次解析で、腹部手術中の尿量減少と術後AKIの関連を解析しています。解析対象患者約2500症例のうち36%の症例で乏尿が1時間以上持続しています。一方、術後AKIの頻度は21%であり、このうち16%がstage 1 AKIであったと報告されています。術中尿量減少は術後AKIの独立したリスク因子であることが示されています。一方、術中尿量減少による術後AKI予測の陽性的中率が25%と低く、術中尿量減少による術後AKI予測は正確とはいえないと述べられています。

 

2019年7月29日 (月)

併発病態と術式リスクを統合した小児手術リスク評価

 Nasr VG, Staffa SJ, Zurakowski D, DiNardo JA, Faraoni D. Pediatric Risk Stratification Is Improved by Integrating Both Patient Comorbidities and Intrinsic Surgical Risk. Anesthesiology 2019;130:971-80.

米国外科学会の大規模databaseを用いた研究で、小児患者の術後30日まえの死亡リスクの定量化を図った研究です。18歳未満の約37万症例を対象として解析しており、全体の死亡率は0.34%とされています。併発病態として重要な項目は体重5kg未満、ASA PS、術前敗血症、血管作動薬投与、人工呼吸および術式リスクが挙げられています。低リスク手術の場合は併発病態3項目までは死亡リスクはほぼ増加がありませんが、高リスク手術の場合は併発病態2項目以上でリスクが指数関数的に増加することが示されています。

 

2019年7月26日 (金)

重症患者におけるdexemdetomidineによる早期鎮静

Shehabi Y, Howe BD, Bellomo R, et al. Early Sedation with Dexmedetomidine in Critically Ill Patients. The New England journal of medicine 2019;380:2506-17.

オーストラリアの研究者が中心となって行った多施設RCTで、侵襲的人工呼吸をうける患者における鎮静薬としてdexmedetomidineとpropofolまたはmidazolamによるusual careで90日死亡率を比較した報告です。人工呼吸開始から6時間以内にRASS -2から1を目標とし、dexmedetomidine群では最高1.5µg/kg/hrまで許容されています。約4000症例をランダム化して比較した結果、主要評価項目には差が認められませんでした。2次評価項目としてはdexmedetomidine群でVFDが1日増加しますが、徐脈、低血圧などのadverse eventも増加することが示されています。なお、dexmedetomidine群の65%の症例で補助的にpropofolあるいはmidazolamが追加されています。

 

2019年7月25日 (木)

拡大手術後の重症患者におけるAKI発生時期

Li S, Wang S, Priyanka P, Kellum JA. Acute Kidney Injury in Critically Ill Patients After Noncardiac Major Surgery: Early Versus Late Onset. Critical care medicine 2019;47:e437-e44.

米国の研究者がまとめたretrospective studyで、術後にICUで治療を受けた腹部、脳神経外科手術患者におけるAKIの頻度、リスク因子および予後に及ぼす影響を発生時期で区別して解析しています。early AKIは術後48時間以内、late AKIは48時間以降7日までとされています。約3500症例を対象として解析した結果、early AKI、late AKIの発生頻度はそれぞれ42%、14%でearly AKIは年齢、BMI、術前eGFRなど、late AKIは敗血症、人工呼吸、水分バランスなどがリスク因子となっています。いずれのAKIであっても12ヶ月後の死亡および血液透析に関する独立したrisk因子であることが示されています。

 

 

2019年7月23日 (火)

術前のfrailおよび術中の血行動態不安定と術後死亡率との関連

James LA, Levin MA, Lin HM, Deiner SG. Association of Preoperative Frailty With Intraoperative Hemodynamic Instability and Postoperative Mortality. Anesthesia and analgesia 2019;128:1279-85.

2015年にBr J Anaesthに掲載された報告の2次解析です。original studyでは術中の平均血圧変動が少ないことが術後死亡率のリスク因子であることが示されていますが、本解析では65歳以上かつfrailと診断された約1200症例に限定して術中の平均血圧変動と術後死亡率の関連を解析しています。結果として65歳以上かつfrailと診断された症例では術後死亡率が高く、術中血圧変動が少ない症例では術後死亡率が高く、かつfrailは中血圧変動と術後死亡率の関連に関与している(mediator effect)と結論されています。




 

2019年7月22日 (月)

心臓外科手術患者におけるリドカイン静脈内投与は神経学的予後を改善しない

Klinger RY, Cooter M, Bisanar T, et al. Intravenous Lidocaine Does Not Improve Neurologic Outcomes after Cardiac Surgery: A Randomized Controlled Trial. Anesthesiology 2019;130:958-70.

米国の研究者がまとめたRCTで、開心術患者における術中から術後48時間までのlidocaine投与が術後認知機能に及ぼす影響をplaceboと比較しています。同じ著者らによる同様の研究が2009年にStroke誌に掲載されており、この研究では糖尿病患者ではlidocaine投与によって認知機能に悪影響が認められています。本研究においては術後6週間後および1年後の認知機能およびADLを用いています。各群約190症例を対象として解析した結果、6週間後の認知機能には差が認められませんでした。1年後に認知機能低下が認められた症例は両群ともほぼ50%で、有意差が認められませんでした。結果としてlidocaine投与による認知機能低下の予防効果は認められなかったと結論されています。

 

2019年7月19日 (金)

肥満患者における術中高PEEPとrecruitmentが術後合併症に及ぼす影響

 Bluth T, Serpa Neto A, Schultz MJ, Pelosi P, Gama de Abreu M. Effect of Intraoperative High Positive End-Expiratory Pressure (PEEP) With Recruitment Maneuvers vs Low PEEP on Postoperative Pulmonary Complications in Obese Patients: A Randomized Clinical Trial. Jama 2019.

ESAのsupport出行われた多施設RCTで、肥満患者における術中換気が術後合併症に及ぼす影響を検討しています。BMI>35で術後肺合併症リスクの高い患者約2000症例を対象とし、高PEEP群と低PEEP群で比較しています。高PEEP群ではPEEP 12cmH2O+recruitment手技、低PEEP群ではPEEP 4cmH2Oでrecruitment手技はrescueと定義されています。結果として両群の術後合併症発生率は21.3%、23.6%で有意差は認められませんでした。subgroup解析でも有意差はありませんが、laparoscopic surgery, upper abdominal surgeryでは高PEEP群で予後が良好な傾向がありそうです。

2019年7月18日 (木)

肺病変に起因するARDSと肺外病変に起因するARDSでの肺機能、リクルートメントおよびガス交換の比較

 Coppola S, Froio S, Marino A, et al. Respiratory Mechanics, Lung Recruitability, and Gas Exchange in Pulmonary and Extrapulmonary Acute Respiratory Distress Syndrome. Critical care medicine 2019;47:792-9.

イタリアの研究者が既報8編のデータを解析した報告で、pulmonary ARDSとextrapulmonary ARDSでガス交換、死腔率、肺コンプライアンス、胸郭コンプライアンスおよび45cmH2OのPEEPによるrecruitabilityなどを比較した報告です。pulmonary ARDS 97症例、extrapulmonary ARDS 84症例で人工呼吸開始後4日目を中心としてデータを収集しています。結果としてpulmonary ARDS群で酸素化、死腔率が低く、45cmH2OのPEEPによるrecruitabilityが高いことが示されています。肺コンプライアンス、胸郭コンプライアンスには差が認められていませんが、extrapulmonary ARDSで腹腔内圧が高いことが示されています。結論では原因を考慮することによってより適切な治療が可能となると述べられています。





 

2019年7月16日 (火)

手術中の酸素分圧高値は術後痛を軽減しない

 Cohen B, Ahuja S, Schacham YN, et al. Intraoperative Hyperoxia Does Not Reduce Postoperative Pain: Subanalysis of an Alternating Cohort Trial. Anesthesia and analgesia 2019;128:1160-6.

術後痛に組織の低酸素、乳酸濃度上昇が関与しているとの仮説の元に、2018年にBr J Anaesthに掲載された大規模前向き研究の結果を再解析しています。大腸がん手術を受ける患者を対象として39か月の研究期間中、2週間ごとに術中FiO2を30%と80%とすることで2群間のバランスをとっています。約5700症例を対象として、術後2時間と24時間のpain scoreおよび鎮痛薬使用量で比較した結果、術中FiO2を増加させることによる術後痛の改善効果は認められませんでした。

 

2019年7月12日 (金)

血液ドナーの性別とレシピエントの死亡率の関連

 Edgren G, Murphy EL, Brambilla DJ, et al. Association of Blood Donor Sex and Prior Pregnancy With Mortality Among Red Blood Cell Transfusion Recipients. Jama 2019;321:2183-92.

これまでの報告では女性、特に妊娠歴のある女性がdonorとなった血液製剤がrecipientの死亡率増加と関連していることが示されており、その機序として輸血関連肺障害の関与が疑われています。本研究では米国のretrospective studyのデータ、米国の民間医療機関のdatabaseおよびscandinaviaのデータを用いて、妊娠歴のある女性donor、妊娠歴のない女性donorおよび男性donorに由来する血液製剤とrecipientの院内死亡率、1年死亡率の関連を解析しています。数万症例から数十万症例を対象とした解析の結果、血液製剤のdonorの性別、妊娠歴の有無とrecipientの死亡率には関連がないことが示されています。

 

2019年7月11日 (木)

早期敗血症患者を対象としたARISE trial対象患者の1年後生存率およびQOL

Higgins AM, Peake SL, Bellomo R, et al. Quality of Life and 1-Year Survival in Patients With Early Septic Shock: Long-Term Follow-Up of the Australasian Resuscitation in Sepsis Evaluation Trial. Critical care medicine 2019;47:765-73.

2015年にN Engl J Medに掲載された敗血症性ショック患者を対象としたARISE trialの対象患者の長期予後を追った報告です。6ヶ月後、1年後の死亡率およびhealth related quality of lifeをEGDT群とusual care群で比較しています。ARISE trial対象患者の約85%で長期予後が解析され、EGDT群とusual care群の間には統計学的有意差がないことが示されています。同様の研究(Promise, Process)でも同様に長期予後に差がないことが考察で述べられています。

 

2019年7月 9日 (火)

麻酔科医は筋弛緩モニタリングに関して過剰な自信をもっている

 Naguib M, Brull SJ, Hunter JM, et al. Anesthesiologists' Overconfidence in Their Perceived Knowledge of Neuromuscular Monitoring and Its Relevance to All Aspects of Medical Practice: An International Survey. Anesthesia and analgesia 2019;128:1118-26.

筋弛緩のexpertが中心になって行ったinternational surveyで、internetで筋弛緩に関する2択問題9問に関して回答および回答の正確性に関する自信を調査しています。約1600名の麻酔科医から回答が寄せられ、正答率は57%でしたが、回答の正確性は84%が自信ありと回答しており、正答率と比較して過剰に自信を持っていることが示されています。この過剰な自信が筋弛緩モニタの使用が広がらない原因の一つであると考察されています。

 

2019年7月 8日 (月)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群を有する小児におけるオピオイドに対する感受性

Montana MC, Juriga L, Sharma A, Kharasch ED. Opioid Sensitivity in Children with and without Obstructive Sleep Apnea. Anesthesiology 2019;130:936-45.

小児扁摘患者では閉塞性睡眠時無呼吸症候群の頻度が多いことが知られており、術後呼吸器合併症の頻度も多いとされています。この背景としてオピオイドに対する感受性の差があり得るという仮説の元に行われた前向き比較試験です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併する小児扁摘患者15症例と閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併市内小児手術患者で全身麻酔開始前にremifentanil持続投与による瞳孔径および呼吸数、PetCO2の変化、remifentanil血中濃度を測定し、比較しています。結果として瞳孔径および呼吸数、PetCO2の変化には有意差がなく、睡眠時無呼吸症候群に由来するオピオイド感受性の差が生じる可能性は少ないとされています。むしろ、睡眠時無呼吸症候群患者では肥満患者が多いことによる血中濃度のばらつきが大きいことが示されています。



 

2019年7月 5日 (金)

人工呼吸器離脱時のSBTに関するPSVとT-pieceの比較

 Subira C, Hernandez G, Vazquez A, et al. Effect of Pressure Support vs T-Piece Ventilation Strategies During Spontaneous Breathing Trials on Successful Extubation Among Patients Receiving Mechanical Ventilation: A Randomized Clinical Trial. Jama 2019;321:2175-82.

スペインの18施設で行われた多施設RCTで、24時間以上人工呼吸を行った患者に対する自発呼吸テスト(SBT)の条件としてPSV 8cmH2O 30分とt-piece 120分を比較しています。約1100症例を対象として比較した結果、抜管後72時間以上侵襲的人工呼吸を必要としなかった症例が、PSV群で82%、t-piece群で74%であり、PSV群で有意に離脱成功率が高いことが示されています。再挿管率は両群とも約11%で有意差が認められませんでした。結語ではless demandingな条件でのSBTで人工呼吸からの早期離脱が達成できると述べられています。

 

2019年7月 4日 (木)

呼吸数と酸素化を組み合わせた指標によるNHFCの効果の予測

Roca O, Caralt B, Messika J, et al. An Index Combining Respiratory Rate and Oxygenation to Predict Outcome of Nasal High-Flow Therapy. American journal of respiratory and critical care medicine 2019;199:1368-76.

フランスとスペインの5施設で行われたprospective, observational studyで、SpO2/FiO2を呼吸数で除したROX indexを用いて肺炎による呼吸不全患者におけるNHFCの成功、不成功を予測しうるかどうかを検証した報告です。ROX indexの確立に関しては2016年にJ Crit Careに発表されており、今回の報告はvalidationとなります。約190症例を対象として解析した結果、HFNC開始後に気管挿管を必要としたHFNC失敗率は35%であったと報告されています。HFNC開始後12時間でのROX indexがAUROC 0.75であり、中程度以上の予測精度を有していることが示されています。

 

2019年7月 2日 (火)

心臓外科手術中の血圧管理が脳組織酸素飽和度に及ぼす影響

 Holmgaard F, Vedel AG, Lange T, Nilsson JC, Ravn HB. Impact of 2 Distinct Levels of Mean Arterial Pressure on Near-Infrared Spectroscopy During Cardiac Surgery: Secondary Outcome From a Randomized Clinical Trial. Anesthesia and analgesia 2019;128:1081-8.

デンマークの研究者が行ったRCTの2次解析で、RCTの結果はcirculationに掲載されています。心臓外科手術、人工心肺中の平均動脈圧と脳組織酸素飽和度の関連を解析しています。約200症例を人工心肺中平均動脈圧を40-50mmHg群、70-80mmHg群にランダム化し、麻酔導入前のrSO2からの低下を比較しています。人工心肺の流量は一定で、phenylephrineまたはnorepinephrine投与で血圧を調節しています。結果として人工心肺中平均動脈圧70-80mmHg群でrSO2が有意に低いことが示されています。結語では人工心肺中の平均動脈圧を血管収縮薬によって上昇させることは推奨できないと述べられています。

 

2019年7月 1日 (月)

帝王切開において全身麻酔が選択される背景とその場合の合併症

Guglielminotti J, Landau R, Li G. Adverse Events and Factors Associated with Potentially Avoidable Use of General Anesthesia in Cesarean Deliveries. Anesthesiology 2019;130:912-22.

米国の研究者がまとめたretrospective studyで、New York州で12年間に行われた全麻下の帝王切開症例に関して全身麻酔の明確な適応の有無と術後合併症の関連を解析しています。全身麻酔の明確な適応に関する記載のない帝王切開の5.7%が実際に全身麻酔で施行されていることが示されています。全身麻酔の適応の記載のない全麻下帝王切開では死亡リスクの増加はありませんでしたが、術後合併症、創部感染症および静脈血栓塞栓症のリスクが有意に増加することが示されています。週末の入院、妊婦の低年齢などが全身麻酔の適応の記載のない全麻下帝王切開の背景因子であることも報告されています。

 

 

« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »

過去の記事

近況報告

  • 臨床麻酔学会シンポジウム
    11/8(金)午後に筋弛緩に関するシンポジウムが予定されています。多数のご参加をお待ちしております。
  • 第66回日本麻酔科学会
    初日の午後のシンポジウムおよび最終日のリフレッシャーコースで発表させていただきます。2日目の学術委員会企画でも座長を仰せつかっております。多数のご参加をお待ちしております。
  • 集中治療医学会@京都
    第20会場でのICUモニタリングup-to-dateというシンポジウムに多数ご参加いただきありがとうございました。
  • J Intensive Care
    本年もreviewer of the yearに選んでいただきました。
  • 麻酔科研修ノート第3版
    稲田先生、上村先生、土田先生、村川先生編集による第3版が刊行されました。管理人も3項目執筆いたしました。
  • 2019年
    12年目になりました。ひきつづきよろしくお願いいたします。
  • Web seminar
    9/25夕方、大塚製薬工場さん主催のweb seminarで「生理学でひもとく最近の周術期循環管理」という内容で発表させていただきました。再放送も予定されているとのことですので、ご興味のある方は大塚製薬工場の担当者にご相談ください。
  • 病院移転
    6/16に行われた管理人の施設の移転が地上波で放送されることになりました(7/27夜NHK)。
  • 病院移転
    管理人の勤務先の新病院への移転が6/16に行われ、無事終了いたしました。
  • 集中治療医学会@幕張
    2/22(木)の午後のCTG委員会企画のシンポジウムに多数ご参加頂きありがとうございます。
2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ