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2020年2月

2020年2月28日 (金)

術前フレイルと手術ストレスが術後死亡率に及ぼす影響

Shinall MC, Jr., Arya S, Youk A, et al. Association of Preoperative Patient Frailty and Operative Stress With Postoperative Mortality. JAMA surgery 2019:e194620.

米国の在郷軍人会病院でのdatabaseを用いて行ったretrospective studyで、術式を手術ストレスによって5段階に分類すること、術前frailの有無と手術ストレスが術後30日、60日、180日の死亡率に及ぼす影響を解析することを目的として行われています。frailの評価にはrisk analysis indexが用いられ、4段階に分類しています。2010年から2014年までのほぼ男性からなる約43万症例を対象として解析した結果、手術ストレスが1から4までの術式ではfrailの程度と比例して死亡率が増加することが示されています。一方、手術ストレスが最大の術式では死亡率が低下することが示されています。考察では手術ストレスの高い術式をうける症例では外科医が慎重に対応した可能性が高い、と述べられています。

 

2020年2月27日 (木)

重篤な尿量減少を予測する患者特異的モデルの確立

Howitt SH, Oakley J, Caiado C, et al. A Novel Patient-Specific Model for Predicting Severe Oliguria; Development and Comparison With Kidney Disease: Improving Global Outcomes Acute Kidney Injury Classification. Critical care medicine 2020;48:e18-e25.

KDIGOなどのAKIの診断基準の一つとして尿量<0.5ml/kg/hrが6時間以上持続、がありますが、最近の報告では0.3ml/kg/hr未満がより適当とされています。いずれにしても尿量のtrendを予測して早期に介入することが可能であれば予後の改善が期待できます。本研究は英国の研究者がまとめたretrospective studyで、心臓外科術後患者約3300症例を対象として、ベイズ統計の手法を用いて将来の6時間における尿量<0.3ml/kg/hrを予測する手段を樹立することを目的としています。論文本体には実際の予測式は記載されていませんが、ROC曲線下面積が0.9以上であり、良好な予測精度を有することが示されています。また実際の予後に関しても本予測式で乏尿の発生可能性が0.8を上回る症例では死亡率、RRT導入率などが有意に高いことが示されています。

 

2020年2月25日 (火)

抜管時のTOFR回復基準としての0.9と0.95の比較

Blobner M, Hunter JM, Meistelman C, et al. Use of a train-of-four ratio of 0.95 versus 0.9 for tracheal extubation: an exploratory analysis of POPULAR data. British journal of anaesthesia 2020;124:63-72.

2019年にLancet Respiratory Medicineに掲載されたPOPULAR studyの2次解析で、TOFR回復基準と術後合併症の関連を再検討しています。特にTOFR回復基準を現在用いられている0.9より高くすることで術後合併症riskが減少するかどうかを解析しています。POPULAR study対象患者のうち、回復時のTOFRが記録されている約3500症例を対象として解析した結果、TOFRの基準を0.86から0.96まで厳格化した場合、術後合併症リスクが段階的に低下することが示されており、その最適閾値として0.95が適当であることが示されています。TOFR>0.95を用いることによって術後合併症リスクが3.5%低下することが明らかになっています。この理由として87%の症例で用いられている加速度式筋弛緩モニタの特性が挙げられています。



 

2020年2月21日 (金)

黄色ブドウ球菌が常在している親に対する治療がNICU入室中の新生児への伝搬に及ぼす影響

Milstone AM et al. Effect of treating parents colonized with staphylococcus aureus on transmission to neonates in the intensive care unit. A randomized clinical trial. JAMA 2020; 323:319-28

NICUにおける黄色ブドウ球菌感染は重大な問題ですが、その経路として環境、医療従事者以外に親からの伝搬も重要であると考えられています。本研究ではNICUで治療を受けている新生児のうち黄色ブドウ球菌が常在化している親を対象として、mupirocinとchlorhexidineによる黄色ブドウ球菌除菌が新生児における黄色ブドウ球菌検出を減少させるかどうかを検証した報告です。米国のNICUでの208組を対象として比較した結果、対照群では28.7%の新生児で親と同型の黄色ブドウ球菌が検出されたのに対して、介入群では14.6%と有意に低下することが示されています。

2020年2月20日 (木)

重症症例における血中adrenomedulin濃度と臓器障害、予後の関連

Lemasle L, Blet A, Geven C, et al. Bioactive Adrenomedullin, Organ Support Therapies, and Survival in the Critically Ill: Results from the French and European Outcome Registry in ICU Study. Critical care medicine 2020;48:49-55.

adrenomedulinは血管内皮細胞由来のpeptideで、重症患者で増加することが知られていますが、予後との関係については相反する結果が得られています。本研究はフランスで行われた多施設観察研究の2次解析で、重症患者における生物活性のあるadrenomedulin濃度と予後の関連を調査しています。約2000症例でICU入室直後の採血検体を用いて解析した結果、敗血症、呼吸不全、心停止蘇生後、心原性ショックなど中枢神経系病態以外でICUに入室した患者では生物活性のあるadrenomedulin濃度が有意に上昇していることが示されています。adrenomedulin濃度上昇は臓器補助の必要性、入室期間延長、28日死亡率増加と関連があることが示されています。



 

2020年2月18日 (火)

術中換気設定が術後の酸素化、肺合併症および死亡率に及ぼす影響

Douville NJ, Jewell ES, Duggal N, et al. Association of Intraoperative Ventilator Management With Postoperative Oxygenation, Pulmonary Complications, and Mortality. Anesthesia and analgesia 2020;130:165-75.

米国の研究者がまとめたretrospective studyで、術後48時間以上人工呼吸を継続した非心臓手術患者を対象として術中換気設定が術後PF比、30日死亡率、術後肺合併症に及ぼす影響を解析しています。1施設で対象症例が10年間で約3000症例あり、そのうち約2100症例を対象と指定解析しています。術中PEEPおよびFiO2増加、高driving pressureが術後PF比低下と関連していることが示されています。また術後PF比高値は30日死亡率、術後肺合併症低下と関連していること、術中一回換気量500ml以上が術後肺合併症と関連していることが示されています。結語では将来の術中換気設定が予後に及ぼす影響を解析する際には術後PF比が適切である可能性があると述べられています。

 

2020年2月17日 (月)

大腸がん患者における血中細胞外粒子中のmicroRNAに及ぼす麻酔薬の影響

Buschmann D, Brandes F, Lindemann A, et al. Propofol and Sevoflurane Differentially Impact MicroRNAs in Circulating Extracellular Vesicles during Colorectal Cancer Resection: A Pilot Study. Anesthesiology 2020;132:107-20.

麻酔薬によってがん手術後の予後が異なる可能性が指摘されていますが、その機構については明らかではありません。本研究では血中細胞外粒子とその内容としてのmicroRNAに注目してpropofol麻酔群とsevoflurane麻酔群での比較を行ったprospective studyです。ドイツにおいて大腸がん手術を受けた患者のうちpropofol麻酔群8例、sevoflurane麻酔群9例から血清中の細胞外粒子を抽出し、その数、サイズおよび含有されているRNAを解析しています。結果として血清中の細胞外粒子の数、サイズには有意差がありませんが、microRNAを解析した結果、propofol麻酔群でapoptosisを促進するmicroRNAが増加する一方、細胞増殖、転移を促進するmicroRNAが抑制されていることが示されています。考察では臨床で示されているpropofolによるがんの予後改善作用の機序の一つである可能性があると述べられています。





 

2020年2月14日 (金)

直腸癌手術患者におけるbeta遮断薬

Ahl R, Matthiessen P, Fang X, et al. beta-Blockade in Rectal Cancer Surgery: A Simple Measure of Improving Outcomes. Annals of surgery 2020;271:140-6.

スウェーデンの研究者がまとめたretrospective studyで、直腸がん手術患者における術前beta遮断薬服用と術後合併症および短期、長期予後の関連を調査しています。約1万2千症例が対象で、80%以上が開腹手術をうけています。術前beta遮断薬を服用していた患者は約30%であったと報告されています。beta遮断薬服用患者の方が明らかに重症度が高く背景を調整した結果、心事故発生率、30日死亡率、1年死亡率など予後がbeta遮断薬服用群で良好であることが示されています。さらに敗血症、縫合不全など直接的にはbeta遮断によるメリットがなさそうな事象についても有意差を持ってbeta遮断薬投与群で良好であることが明らかになっています。

 

2020年2月13日 (木)

ARDS患者における肺リクルートメント効果の予測

 Chen L, Del Sorbo L, Grieco DL, et al. Potential for Lung Recruitment Estimated by the Recruitment-to-Inflation Ratio in Acute Respiratory Distress Syndrome. A Clinical Trial. American journal of respiratory and critical care medicine 2020;201:178-87.

カナダの2施設で行われたobservational studyで、中等症から重症のARDS患者を対象としてrecruitmentによって酸素化が改善するか、あるいは酸素化が改善せず肺の過膨張が生じるか(potential for lung recruitment)をbedsideで評価する方法を検討した報告です。具体的には15~18cmH2Oのhigh PEEP状態と5~8cmH2Oのlow PEEP状態でstatic PV curveの傾きと肺容量を比較してR/I ratioを計算し、R/I ratioの大小で比較しています。主要な発見としては45症例中15症例でairway closureが認められており、ARDS患者でlung mechanicsを評価する上ではairway closureを考慮する必要があること、R/I比が小さい症例、すなわちpotential for lung recruitmentが少ない症例群ではhigh PEEPによって酸素化が改善せず、血圧が低下することが示されています。



 

2020年2月10日 (月)

大腸切除患者における血中細胞外vesicle中のmidco RNA濃度に関するpropofolとsevofluraneの比較

Buschmann D, Brandes F, Lindemann A, et al. Propofol and Sevoflurane Differentially Impact MicroRNAs in Circulating Extracellular Vesicles during Colorectal Cancer Resection: A Pilot Study. Anesthesiology 2020;132:107-20.

 

非心臓手術患者におけるvitamin D濃度と術後合併症の関係

Turan A, Artis AS, Hanline C, et al. Preoperative Vitamin D Concentration and Cardiac, Renal, and Infectious Morbidity after Noncardiac Surgery. Anesthesiology 2020;132:121-30.

VISION studyのsubgroup解析で、術前血液検体を採取した約4000症例を対象としてvitamin D濃度と術後合併症の関係を解析しています。主要評価項目としては術後30日までのMACE、2次評価項目としては術後eGFR、AKIおよび感染症が用いられています。結果として多数の患者でvitamin D濃度が健常人の下限を下回っていること、MACEおよびAKIとの有意な関連は認めないが、直前のvitamin D濃度低下が術後感染の有意なリスク因子であることが示されています。

 

2020年2月 7日 (金)

frailは外科手術後死亡および新規機能障害の予測因子である

McIsaac DI, Taljaard M, Bryson GL, et al. Frailty as a Predictor of Death or New Disability After Surgery: A Prospective Cohort Study. Annals of surgery 2020;271:283-9.

カナダの研究者が行ったprospective studyで、65歳以上の非心臓手術患者を対象として術前frailと90日死亡率と術後に発生した主観的な機能低下からなる複合アウトカムの関連を調査した報告です。frail診断にはmFIとCFSの2つの指標を用いてこれらの比較も行っています。対象患者約700症例のうち約11%で複合アウトカムが発生しています。術前frailはいずれの指標でも40%程度認められており、術前frailはアウトカム発生リスクを2倍増加させることが示されています。frail指標のうちCFSの方が短時間で評価が可能であり、評価者から有意に高い評価が得えられています。

 

2020年2月 6日 (木)

血漿sRAGEは敗血症とARDSを関連付ける遺伝的因子である

 Jones TK, Feng R, Kerchberger VE, et al. Plasma sRAGE Acts as a Genetically Regulated Causal Intermediate in Sepsis-associated Acute Respiratory Distress Syndrome. American journal of respiratory and critical care medicine 2020;201:47-56.

RAGEはDAMPsの一つであるAGEの受容体が血中に遊離した分子で、ARDSのbiomarkerの一つと見なされています。本研究では敗血症由来のARDS患者におけるsRAGE濃度が遺伝子的にどのように調節されているかを解析した報告です。米国と欧州で集積されたcohortを対象として解析した結果、sRAGE濃度上昇が敗血症患者におけるARDS発症のリスク因子であることが示されています。さらにMendelian randomizationという手法を用いて解析した結果、sRAGE濃度と敗血症由来のARDS発症に因果関係があることが示されています。

 

2020年2月 4日 (火)

大腿骨頸部骨折患者における術後せん妄リスクスコアの確立

Kim EM, Li G, Kim M. Development of a Risk Score to Predict Postoperative Delirium in Patients With Hip Fracture. Anesthesia and analgesia 2020;130:79-86.

米国外科学会のdatabaseを用いて行ったretrospective studyで、大腿骨頸部骨折患者における術後せん妄を予測するscoring systemの確立と制度の検証を行った報告です。60歳以上の対象患者約10000症例のうちscoring systemのdevelopment cohortではせん妄発生率が29%で、リスク因子としては術前せん妄、術前認知機能低下、高齢、内科的合併症、ASA PS>2、要介護、喫煙、SIRS、歩行補助が抽出されています。validation cohortで検証した結果、せん妄リスクスコアのAUROCは0.77~0.79で十分な精度を有すると結論されています。

2020年2月 3日 (月)

フレイルの評価による非心臓手術後の入院期間と重篤な合併症の予測精度

Sonny A, Kurz A, Skolaris LA, et al. Deficit Accumulation and Phenotype Assessments of Frailty Both Poorly Predict Duration of Hospitalization and Serious Complications after Noncardiac Surgery. Anesthesiology 2020;132:82-94.

米国の1施設のdataを用いて行ったretrospective studyで、術前のfrailの2つの評価方法によって入院期間延長、合併症発生を予測できるかどうかを検討しています。frailの評価にはmodified frail indexとHopkins frail scoreが用いられています。非心臓手術をうけた約1000症例を対象として検討した結果、modified frail index>3の症例は18%、Hopkins frail score>2の症例は23%であったことが示されています。これらのscoreによる入院期間延長、合併症発生の予測精度は低いことが明らかになっています。

 

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近況報告

  • 体液代謝管理研究会
    2/22(土)に昭和大学で体液代謝管理研究会が開催されます。管理人は共催セミナーで「輸液は腎臓を守れるか」というタイトルで発表させていただきます。多数のご参加をお待ちしております。
  • 2020年
    13年目になりました。引き続きよろしくお願いいたします。
  • 臨床麻酔学会シンポジウム
    11/8(金)午後の筋弛緩に関するシンポジウムに多数のご参加いただきありがとうございました。
  • 第66回日本麻酔科学会
    初日の午後のシンポジウムおよび最終日のリフレッシャーコースで発表させていただきます。2日目の学術委員会企画でも座長を仰せつかっております。多数のご参加をお待ちしております。
  • 集中治療医学会@京都
    第20会場でのICUモニタリングup-to-dateというシンポジウムに多数ご参加いただきありがとうございました。
  • J Intensive Care
    本年もreviewer of the yearに選んでいただきました。
  • 麻酔科研修ノート第3版
    稲田先生、上村先生、土田先生、村川先生編集による第3版が刊行されました。管理人も3項目執筆いたしました。
  • 2019年
    12年目になりました。ひきつづきよろしくお願いいたします。
  • Web seminar
    9/25夕方、大塚製薬工場さん主催のweb seminarで「生理学でひもとく最近の周術期循環管理」という内容で発表させていただきました。再放送も予定されているとのことですので、ご興味のある方は大塚製薬工場の担当者にご相談ください。
  • 病院移転
    6/16に行われた管理人の施設の移転が地上波で放送されることになりました(7/27夜NHK)。
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